開口タイプ11で両側の柱際に縦スリットを設けましたが耐震壁となります。何故でしょうか。 [文書番号 : DOCR00864]

概要
開口タイプ11のみで縦スリットを配置した場合、耐震壁としてモデル化され指定が無効となります。計算仕様について回答します。
回答
開口タイプ11(完全スリット)は、他の通常開口の開口タイプとの組み合わせで用いる想定としています。
開口タイプ11のみで縦スリットを配置した場合、耐震壁としてモデル化されるため指定が無効となります。


・組み合わせた通常開口の開口周比が0.4以上となりますと縦スリットが有効となります。
・組み合わせた通常開口の開口周比が0.4未満となりますと耐震壁としてモデル化されます。
 開口タイプ11の指定が無効となります。


【縦スリットを有効とする入力例】
柱際の2辺に開口タイプ11により縦スリットを配置しています。中央の通常開口により開口周比が0.4以上となるため、うちのり高さ計算に縦スリットが考慮されます。


開口タイプ 11で指定した縦スリットが有効となる例



開口タイプ11のみの指定でスリットを有効としたい場合
・開口周比の直接入力で0.4以上を指定しますと耐震壁とならず、柱際の縦スリットがうちのり高さに有効となります。
・開口タイプ11のみで3辺スリット(縦スリット及び水平スリット)とした場合は耐震壁となりません。
 柱際の縦スリットが内のり高さに有効となります。

解説
開口周比、うちのり高さ計算に考慮する開口タイプは下表となります。
部分スリットを含む開口タイプ 12~14は対応していません。ご注意ください。
    
開口タイプ
開口周比
うちのり高さ
開口包絡
面積和
利用可
通常開口
1~7
21~27
スリット開口
11
柱際縦スリット1辺
×
×
〇※2
柱際縦スリット2辺
×※1
×※1
〇※2
3辺スリット
-
-
9~10
-※3
-※3
利用不可
12~14
-
-
-
〇:考慮する
×:考慮しない
-:利用対象外

※1 スリット開口のみ配置した場合は開口周比計算を行いません。通常開口とスリット開口を組合わせて配置した場合は通常開口により開口周比計算を行います。

※2 通常開口とスリット開口を組合わせ配置し、耐震壁とならない場合、指定したスリット開口をうちのり高さ計算に考慮します。

※3 スリット開口を単独で指定する開口タイプです。指定があれば耐震壁となりません。開口タイプ9、10は他の開口と組み合わせることはできません。 また、開口タイプ9~14どうしを組み合わせることもできません。

【注意】
・開口タイプ11~14 で入力した開口は重量計算に考慮されません。開口が無いものとして重量を拾います。
・『開口タイプ』の説明については、[壁形状]又は[壁形状2の壁開口(RC、SRC)]の対話入力ダイアログの[ヘルプ]ボタンを押しご参照ください。


詳細
『完全スリット付壁』の剛域・剛性増大率等のモデル化について
診断に関連する規基準では『完全スリット付壁』のモデル化関する記載を確認できませんでした。
DOC-RC/SRCでは『RC/SRC/S造建物の一貫構造計算 BUS-6 Ver.1.0』と同様に考慮しています。
仕様については下記をご確認ください。

[ヘルプ]→[ヘルプの目次]より、[BUSシリーズ ヘルプ]を開き
■BUS-6 Ver.1.0:[BUS-6概要編]のボタンを押し、PDF形式のマニュアルより後述の参照頁をご確認ください。

RC/SRC/S造建物の一貫構造計算 BUS-6 Ver.1.0 概要編
2020年4月第8版発行
項目:スリット付壁) 三方完全スリット(開口タイプ9、10)
項目:スリット付壁) 2)完全スリット付壁(開口タイプ11)
項目:付3 開口タイプ9、10 によりはりに腰壁・たれ壁がある場合の曲げ剛性増大率の計算

スリット付壁による剛性増大率の計算方法の選択を設けています。
[構造計算共通条件]→[モデル化]→[モデル化条件]→〔開口壁〕タブ
スリット付壁による剛性増大率 より下記3項目の何れかを指定できます。

1)KS式
弊社で設けた計算方法です。
概要編マニュアルをご参照ください。

2)JSCA式
鉄筋コンクリート造建築物における 構造スリット設計指針
2009年7月25日1版1刷発行
項目:2.2 スリット付壁を含む曲げせん断剛性評価

3)事務所協会式(省略値)
社団法人 日本建築士事務所協会連合会
建築基準法改正に基づく 構造設計Q&A集
2005 年10 月17 日
項目:6.1.1 スリットのあるはり剛性評価の考え方

【補足】
部分スリットを含む 開口タイプ12~14について
DOC-RC/SRCでは対応していません。
配置を行い計算実行しますと計算過程で下記のメッセージ表示し計算を中止します。ご注意ください。
『1次、2次耐震診断において壁開口タイプ12以降が使用されているため、計算を中止します。』

部分スリットに関しては2015年版 建築物の構造関係技術基準解説書
付録1-3.2 剛節架構内の鉄筋コンクリート造腰壁・そで壁等の構造計算上の取り扱い(684頁~686頁)にタイプBとして記載があります。
参考
2015年版 建築物の構造関係技術基準解説書
平成27年 6月28日 第1版第1刷発行
項目:付録1-3.2 剛節架構内の鉄筋コンクリート造腰壁・そで壁等の構造計算上の取り扱い

2017年版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指針・同解説
平成29年7月1日2017年改訂版発行
項目:【本文】3.3.7耐震スリット
項目:【解説】2.1.2補強工法の選定 (2)補強工法の概要 (ⅱ)靭性を高める
項目:【解説】3.3.7 耐震スリット(参考として部分スリットについての記載が2017年版より追記されています)
項目:【解説】3.3.8補強計算例(スリットを用いた補強計算例が記載されています。)

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文書情報

製品カテゴリ: DOC-RC/SRC 最終更新日: 2021-03-12
バージョン: DOC-RC/SRC[ver.10.x],
文書番号: DOCR00864
分類: 計算方法


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