本資料では、一貫計算の結果から断面検定に使用される応力がどのように算出・割増されるのか、その過程を整理し検証します。
1. 断面検定用資料の出力設定と注意点
一貫計算のデフォルト設定では断面検定用の詳細な数値は出力されません。検証にあたっては、まず以下の設定を確認します。
- 出力設定: [出力指定]より「7.2.3.2 断面検定用応力表」にチェックを入れて構造計算書を出力します。
- 計算位置の指定: [断面計算条件]→[断面計算位置]で指定された位置(剛域端など)の応力が、§7の「断面検定用応力図・表」に出力されます。
【重要:§6以前と§7以降の応力図の違い】
§6 以前の応力図(例:6.3.1.1 地震荷重時応力図): 解析モデル上の「節点位置」における生データを描画しています。
§7 以降の応力図(断面検定用): 指定された「断面計算位置(はり面)」における応力を描画しています。ここからさらに「割増率」を考慮して断面計算が行われます。
§6 以前の応力図(例:6.3.1.1 地震荷重時応力図): 解析モデル上の「節点位置」における生データを描画しています。
§7 以降の応力図(断面検定用): 指定された「断面計算位置(はり面)」における応力を描画しています。ここからさらに「割増率」を考慮して断面計算が行われます。
【補足:応力図による符号(+/-)の反転について】
解析上の応力図(§6)と断面検定用応力図(§7)で符号が逆転する場合がありますが、これは計算項目ごとに「正負の定義」が異なるための仕様であり、計算自体は正しく連動しています。
解析上の応力図(§6)と断面検定用応力図(§7)で符号が逆転する場合がありますが、これは計算項目ごとに「正負の定義」が異なるための仕様であり、計算自体は正しく連動しています。
- 解析用符号(§6): 部材座標系や、解析上の力の向き(時計回り等)を基準に表示。(マニュアル第2章「2.1.1 座標系」)
- 検定用符号(§7): 「断面のどちら側が引張か」を基準に表示。
(柱の場合:断面の右側が引張となる場合を「正(+)」、左側引張を「負(-)」とする)(マニュアル第6章「6.2.2.2 断面計算位置ごとの応力の計算」)
2. 断面計算位置における応力の検証(節点から検定位置へ)
§6の節点応力から、§7の断面検定用応力表の値になる過程を検証します。
【検証箇所:2F 柱頭(X方向正加力)】
節点位置のモーメントを、せん断力とはり面までの長さを用いて断面計算位置(はり面)へスライドさせます。
- 節点モーメント(Mn):-2.46 kNm
- せん断力(Q):0.33 kN
- 柱頭節点~はり面までの長さ(L):0.375 m
計算式:断面計算位置のモーメント = Mn + (Q × L)
-2.46 + (0.33 × 0.375) = -2.336 ≒ -2.34 kNm
→ この算出値は、次項の検証で使用する『7.2.3.2 断面検定用応力表』の画像の数値(2.34)と整合します。
3. 荷重組合せと割増率の定義
断面検定に用いる応力は、単一の荷重ではなく、以下の組合せおよび割増率を考慮したものです。
① 荷重組合せ
「長期=鉛直のみ」「短期=地震のみ」ではありません。計算編マニュアル「表 6.2.2-2 荷重ケースと荷重の組み合わせ」より以下の合算値を用います。
- 長期(常時): 固定 + 積載 (+ 多雪区域は積雪)
- 短期(地震時): 固定 + 積載 + 地震 (+ 多雪区域は積雪)
② 応力の割増率(2F C1Aの例)
割増率は「7.2.2.2 応力の割増率の詳細」に記載されており、複数の要因を掛け合わせて算出されます。
今回のM(曲げモーメント)割増率:29.68 の根拠
- 水平力負担率による割増(1.12): 計算編マニュアル「6.2.3.1 耐力壁の地震時水平負担率による応力の割増し」より告示第594号に基づき、RC造耐力壁の水平力負担率が1/2を超える場合の柱応力(M, Q)割増。
- 長柱(細長比)による割増(26.45): 計算編マニュアル「6.2.3.2 長柱(細長比)による柱の応力の割増し」より告示第433号およびRC規準14条に基づく、RC造長柱の(M, N)割増。
計算:1.12 × 26.45 ≒ 29.68
4. 最終的な断面検定用応力図(§7.2.3.1)との整合
「断面検定用応力表(位置補正後)」の値に「割増率」を乗じ、荷重を組み合わせて最終的な「断面検定用応力図」の数値となります。
今回は断面計算結果の短期の荷重名が「L+EX」となっているため、「固定 + 積載 + X方向地震正加力」になります。
詳しくはマニュアルの「表6.2.2-3 検討対象とする応力の組み合わせ荷重ケース一覧」をご参照ください。
数値検証(2F 柱頭の例)
- NL(長期軸力): 161.05 × 1.12(倍率) ≒ 180.68 kN
- ML(長期曲げ): -0.52 × 1.12(倍率) ≒ -0.59 kNm
- NS(短期軸力): {161.05 + (-53.24)(地震)} × 1.12(倍率) ≒ 120.94 kN
- MS(短期曲げ): -0.52(表の鉛直の値) × 1.12(倍率) + 2.34 × 29.68(倍率) ≒ 68.79 kNm
- QS(短期せん断): -0.17(表の鉛直の値) × 1.00(倍率) + 0.33 × 26.45(倍率) ≒ 8.56 kN
検定比(M/Ma)の確認
算出された設計用応力を許容応力(Ma)で除し、検定比を求めます。
- 長期検定比(柱頭): |-0.59| / 64.09 ≒ 0.01
- 長期検定比(XY2軸柱頭): |-0.59 -0.97| / 64.09 ≒ 0.02
- 短期検定比(柱頭): 68.79 / 117.59 ≒ 0.58
- 短期検定比(XY2軸柱頭): ( 68.79 + 20.63 ) / 117.59 ≒ 0.76





