鉛直傾斜した部材の耐力・F値の計算方法について教えてください。 [文書番号 : DOCR00885]

概要
計算方法について回答します。
回答
計算方法について回答します。
以降の説明では、平面傾斜角と区別するため、傾斜角θに添え字としてV (垂直:Vertical)を用います。
ご利用のバージョンにより計算仕様が異なります。


DOC-RC/SRCVer9.0.70.11 DB7.0.1.11以前について
立面的に傾斜した独立柱、そで壁付柱について、Qsu、Qmu を傾斜角度θvで補正しています。
角度θvで傾斜する鉛直部材についても平面傾斜した場合と同様にF値もcosθv倍による補正を考慮しています。F値には直接傾斜角度θvによる補正を行わずに、Qsu、Qmu にF値分の補正を乗じ下記のように考慮します。

Qmu=Q’mu×cosθv(立面的な傾斜分の補正)×cosθv(F値分の補正)
Qsu=Q’su×cosθv(立面的な傾斜分の補正)×cosθv(F値分の補正)

ここで、Q’mu、Q’suは補正前の耐力です。

また
Qmu の計算ではh'0(=h0 / cosθv)として計算しています。
Qsu およびF値の計算では立面傾斜を考慮しない鉛直方向の内法高さh0を考慮しています。


例えば、Qmuについては下記のように計算しています。



Qmu =Q’mu×cosθv×cosθv= 2Mu / h'o ・cos2θv= 2Mu/ho ・cos3θv
Q'mu=2Mu / h'o

ここに、
Qmu:曲げ降伏時せん断力の水平方向成分
h'o =h0 / cosθv


したがって、傾斜柱の曲げ終局強度を柱うちのり高さho で除したせん断力にcos3θv を乗じたものを降伏
曲げせん断力とします。軸力の水平方向成分は無視しています。
せん断終局強度Qsu は算定式で求めた値にcos2θv を乗じて求めています。



DOC-RC/SRCVer10.0.70.12 DB7.0.1.12以降について
F値は変形角から求めますが、下図のように長さhoのAの柱がδまで変位した時の変形角Rと、鉛直傾斜角θv、長さh’o(=ho/cosθv)のBの柱が、δと同じ垂線上のδ’(=δ/cosθv)まで変位した時の変形角R’は同じ角度と考えられます。傾斜しないAの柱と傾斜したBの柱の変形角は同様となるため、F値分のcosθv補正は行わないものとしました。
うちのり高さの扱いを統一するため、Qsu およびF値計算もh'0(=h0 / cosθv)を用いて計算するよう変更しました。
独立柱については後述の1)~4)のように、そで壁付柱は 5)のように変更しています。




独立柱
1)曲げ終局時せん断力
曲げ終局時せん断力は、以下のように補正します。

Qmu=Q'mu×cosθv=(2Mu / h'o)・cosθv
   ここで、
   Q'mu=2Mu / h'o
    h'o=ho / cosθv とします。
   ここに、
    Qmu :曲げ終局時せん断力の水平成分
    Q'mu:曲げ終局時せん断力(補正前)
    Mu :曲げ終局強度
    ho :うちのり高さ

2)せん断終局強度
せん断終局強度Qsu は算定式で求めた値(=水平方向へ補正する前のせん断終局強度Q'su)にcosθvを乗じて求めます。
Q'su 計算時のM/Qd に用いるうちのり高さはh'o(=ho / cosθ)とします。

3)F値
F値計算ではho の代わりにh'o(=ho / cosθv)を用います。

4)hoを直接入力した場合
直接入力がある場合は、入力値をh'o としてQ'mu、Q'su を計算し、その値を用いてQsu、Qmu およびF値を算定します。

そで壁付柱
5)そで壁付柱の計算仕様
そで壁付柱はそで壁の長さによって柱に近い形状から耐震壁に近い形状まで存在します。
独立柱とは変形性状が変わると考えられますが、関連する規基準に参考となる補正方法を確認できませんでした。傾斜角度による耐力の補正計算の対象外とし、Qmu、Qsu、F 値の計算に用いるうちのり高さは垂直方向のhoとし補正を行いません。
傾斜角度による補正を考慮する場合は、別途、診断者判断により、耐力、うちのり高さ、F値の直接入力を行ってください。

そで壁付き柱に立面的な傾斜角が生じる場合は、下記の評価範囲内メッセージを出力します。
「そで壁付柱は立面的な傾斜角度を考慮しません。傾斜角度による補正を考慮する場合は、診断者が別途検討する必要があります。」


【出力】
グラフィック出力
項目:10.1.1  部材の終局強度と靭性能(2)結果内訳(正加力時):立面的な傾斜角によるcosθvを出力します。

詳細出力
[耐震診断]→[CSV形式ファイルの出力]→[終局強度の個別出力]より
確認する検討方向、柱・壁又ははりにチェックを入れ、柱部材の配置軸を指定し[OK]を押します。
部材のMu及びQsu計算結果の上段に『立面的傾斜角度θv(度)』『角度補正係数cosθv』の値が出力されます。


【注意】
・立面的な傾斜角度(θv)が15°を超えた場合は評価外となり、下記の評価範囲外メッセージを出力します。
 「(1)立面的な傾斜角度が 15°を超えているので、評価範囲外です。」

・立面的に傾斜した柱の部材軸方向の耐力による水平方向成分は考慮していません。
 考慮する場合は別途検討し、耐力の直接入力を行ってください。

・関連する規基準等に鉛直傾斜部材の補正に関連する記載を確認できませんでした。
 弊社で設けた計算方法となります。
 自動計算の結果がモデル化意図と異なる場合は、耐力、うちのり高さ、F値の直接入力を行ってください。

・SRC造の柱も同様に補正します。

・DOC-RC Ver.8.2で立面的に傾斜する部材がある場合は下記の評価範囲内メッセージを出力します。

【評価範囲内メッセージ】-------------
立面的に傾斜する部材があります。以下のようにDB7.0.1.12以降、立面的に傾斜する部材の耐力・ho・断面積による部材剛性の補正方法が変わりました。

 ・柱の耐⼒はcosθv の2 乗で補正していましたが、cosθv で補正します。
 ・Qsu とF 値に使⽤するho は鉛直⽅向の⾼さでしたが、傾斜⾓度を考慮した⾼さになります。
 ・ho の直接⼊⼒値は鉛直⽅向の⾼さ扱いでしたが、傾斜⾓度を考慮した⾼さ扱いになります。
 ・断面積による部材剛性はcosθv の2 乗で補正していましたが、補正を⾏いません。
 ・そで壁付き柱は独⽴柱と同じ補正をしていましたが、補正を⾏いません。』
-------------

ただし、偏心率・剛重比を精算法によって求める場合は断面積による部材剛性を使用しないため、メッセージ文中から 「断面積による部材剛性」、「・断面積による部材剛性はcosθv の2 乗で補正していましたが、補正を⾏いません。」を除いて出力します。

操作
柱の耐力直接入力
[耐震診断]→[部材耐力]より、[柱耐力直接入力(2次診断)]より指定できます。

うちのり高さ
[耐震診断]→[部材指定]→[柱うちのり高さ直接入力]より、うちのり高さを直接入力できます。

F値の直接入力
[耐震診断]→[部材指定]→[F値の直接入力]より、タブ:〔柱〕よりF値を直接入力できます。

DOC-RC/SRCのバージョン、データベース番号の確認方法
DOC-RC/SRCを起動し、[ヘルプ]→[バージョン情報]より、ご利用のバージョン、データベース番号を確認できます。
また、計算結果出力の表紙右下にも記載されます。


参考
DOC-RC Ver.10.0(2017 年版RC 診断基準 第1、2 次診断法)
評価取得版マニュアル 概要・出力編
2021 年 3 月 初版発行
項目:3.4.9 立面的に傾斜した柱の場合の計算

関連文書
DOCR00857 プログラムのマニュアルの参照方法を教えてください。



文書情報

製品カテゴリ: DOC-RC/SRC 最終更新日: 2021-03-10
バージョン: DOC-RC/SRC[All],
文書番号: DOCR00885
分類: 計算方法


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