「はりの降伏時剛性低下率αyの計算式の適用範囲を超えた」のメッセージについて [文書番号 : BUS00956]
概要
「はりの降伏時剛性低下率αyの計算式の適用範囲を超えた」のメッセージが出力される理由と対策について
現象
「αy」のメッセージで降伏時剛性低下率は、BUS 概要編マニュアルの
「6.2.3 部材の弾塑性モデル □はりの弾塑性モデル a)曲げ剛性」に記載されている様に、
「5.0≧(a/D)≧2.0」の範囲では、(RC規準(8.9)式)により、
「2.0>(a/D)≧1.0」の範囲では、RC終局強度資料21-(2)式によって、計算しています。
「a/D」が上記の範囲を外れる場合は、対応式の明記が無いため適用範囲外となります。
「a/D」の適用範囲や、「pt=0.4~2.8%」の範囲を超える場合にメッセージを出力し、設計者に確認対応頂く
仕様となっています。(2015年版建築物の構造関係技術基準解説書(第1版第1刷)P651に記載)
なお、降伏時剛性低下率計算時の「pt」ですが、RC規準2010年版 P76の記載により「pt=at/(bD) 」として算出しています。
このメッセージが出力された場合「αy」算出式の適用範囲外となり、プログラムの自動判断で計算できず
「αy=1.0」とて扱い、メッセージを出力する仕様となっています。
出力されるメッセージ
・N [〇フレーム〇軸〇層]:はりの降伏時剛性低下率αyの計算式の適用範囲を超えたためαy=1としました。
対処方法
適用範囲外の場合に、αy=1.0として計算する場合、ヒンジ発生までの剛性が大きくなるので、ヒンジ発生位置や破壊性状などが同じであれば、同じ限界層間変形角までの層せん断力Quが大きくなると考えられます。
最終的な保有耐力への影響は、αy計算の適用外となる部材数等にもよりますが、当該部材がほぼ曲げ降伏し、荷重-変位図でも降伏後に十分変形している場合には、建物の耐力として頭打ちになりますので、最終的な保有耐力への影響はあまり無いと思われます。(最終判断は設計者として判断して下さい)
しかし、剛性評価が異なりますのでヒンジ発生位置や破壊性状にも影響し、Ds値が変わる場合も考えられます。
以上の影響などが考えられますが、どの程度の影響があるかは、建物モデルにより異なりますし、ひび割れによる剛性低下率もモデル化の部分であり、そのほかへの影響も留意する必要があるかと思います。
従って、適用範囲外の場合に、「αy=1.0」として計算して良いか、適用範囲外でも降伏時剛性低下率の式によった「αy」を採用するかは、設計者に判断していただく必要があります。
適用範囲外の場合にメッセージを出力しない設定は用意していませんので、設計者の判断によりコメント対応頂くか、下記の設定を行い計算値による「αy」を採用されるか、設計者の意図する値をの直接入力で対応頂かになります。
【適用範囲外でも計算値を使う設定】
[許容応力度等]→[保有計算-計算条件]→[解析条件等]→[危険断面位置・部材耐力] タブの「ひび割れによる剛性低下を考慮する」にチェックし、「適用範囲外でも考慮する」を指定頂く事で、αy算出式の適用範囲を超えた場合も「αy=1.0」とせずに算出式によるαyを採用することが可能です。
ただし、下記内容のWメッセージが出力されますので、設計者様の判断によるコメントをお願いします。
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降伏時剛性低下率αyの計算でシアスパン比が計算式の適用範囲を超えているため
計算結果の妥当性を確認してください。
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【直接入力する場合】
設計者の判断にて、別途に「αy」を算出頂き、割線剛性比「αy」を直接入力する場合の設定方法は下記になります。
[許容応力度等]→[保有計算-モデル化]→[部材の塑性特性]→[はり] タブにある「曲げ降伏時の割線剛性比」で自動のチェックを外し、意図する値を入力頂く事になります。
ただし、現状では左端・右端・上端・下端のそれぞれの位置に対しての入力を設けておらず、はり1本に対して共通の入力となっておりますので、設計者様の判断で採用値を設定して頂く事になります。
補足
自動計算によるαyですが、計算結果では表示出力しておりませんが、CSVファイルとして出力しております。
αyの詳細確認については、一度、CSVファイルにてご確認頂ければと思います。
ただし、現状でのCSVファイル出力は、はりのみとなっております。
ご不便をおかけして申し訳ございませんが、何卒、ご了承ください。
CSVファイルの出力方法は以下の通りです。
[出力]→[オプション]の中で[CSV形式ファイルを出力する(許容、保有計算)]にチェックを入れてください。
次に再度計算を行います。
[ファイル]→[環境設定]で「ワークパス」に指定したフォルダをエクスプローラー等で開きます。
初期設定では、[ドキュメント]→[kozosystem]→[bus6]([bus5])→[work]に設定されています。
その中に「BUSOUT」、「U2OUT」というがフォルダがあります。
曲げ降伏時の割線剛性比αyに関しては、「U2OUT」フォルダに「はり曲げひびわれ剛性比.csv」としてCSVファイルが参考出力されます。
(上記は参考値であり、αyが自動計算で適用範囲外の場合は、BUS-5/BUS-6ではαy=1.0として解析・計算しています)
【お願い】
CSVファイルにつきましては、開発チェック用のファイルを要望があって公開しているファイルですので、内容についてのマニュアルや、サポートは行っていません。また、内容についてもバージョンの更新時に変更する場合があります。利用者の責任でお使い下さい。
注意
【適用範囲外でも計算値を使う設定】は、
BUS-6 Ver1.0.8.0(DB6.8.1.0)・BUS-5 Ver1.1.8.0(DB6.8.0.0) 以降のバージョンから
対応した機能ですので、それ以前のバージョンでは直接入力のみでの対応となります。