鋼材の降伏点強度・破断強度にはどのような値を入力すべきですか。 [文書番号 : DOCR00587]

概要
参考を回答いたします。
回答
2017年版のRC造耐震診断基準、2009年版のSRC造耐震診断基準では既存材の降伏点強度、引張強度についての記載があります。特に、2009年版のSRC造耐震診断基準では山形鋼の降伏点強度について、2017年版のRC造耐震改修設計指針では曲げ、せん断、アンカー筋の降伏点強度に『関連する規・基準に定める値』と記載されています。参考文献の抜粋と関連する操作をお伝えいたします。


【 RC造 既存材 】
2017年版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準 同解説
77頁 項目:『2.5材料強度の設定』 (2)鉄筋の材料強度(降伏点)の設定

(a)鉄筋を抜き取り、引張試験を実施した場合
 鉄筋を抜き取り、引張試験を実施した場合は、その結果に基づき降伏点を設定する。

(b)引張試験を実施しない場合
 引張試験を実施しない場合は、設計図書に記載された鉄筋仕様に基づき、降伏点を以下のように設定する。

 丸鋼の場合(SR24) :294 N/㎜2
 異形鉄筋の場合(SD30、SD35) :規格降伏点強度+49N/㎜2

(C)鉄筋の仕様が不明の場合
 設計図書が無い場合、または設計図書に鉄筋の使用が記載されていない場合には
 昭和30年以降の建物については、建設当時に一般的に使用されていた鉄筋の仕様に基づき
 鉄筋の降伏点強度を丸鋼の場合は240N/㎜2異形鉄筋の場合は300N/㎜2を設定してよい。
 昭和30年以前の建物については、鉄筋の抜き取り引張試験を行って設定する必要がある。


【 RC造 補強材 】
2017年版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指針・同解説
80頁 項目:2.2.2材料強度 (2)補強部材・部位に用いる材料強度

 補強部材・部位に用いる材料の強度は、本指針中の該当部分に必要に応じて適宜示してある。
 特記なき場合は、関連規・基準や指針に定める値としてよい。
 解表 2.2.2-1 には補強部位の鉄筋の材料強度の設定の考え方も示してある。
 例えば、曲げ強度に用いるSD390以下の異形鉄筋であれば基準解説書に従い規格降伏点の1.1倍としてよい。
 一方、せん断補強筋に用いる場合は通常は基準書に従い1.1倍していない。
 しかしながら、補強設計においてはせん断強度式に下限式を用いているため、曲げ補強筋と同様に1.1倍する場合もある。
解表 2.2.2-1 鉄筋の材料強度
異形鉄筋(SD30,SD35,SD295,SD345)
丸鋼
曲げ補強
せん断補強
アンカー筋
曲げ補強
せん断補強
既存部分
規格降伏点 +49N/mm2
規格降伏点 +49N/mm2
-
294N/㎜2
294N/㎜2
補強部分
規格降伏点 ×1.1
規格降伏点 ×1.0(1.1)
規格降伏点
-
-



【 SRC 造 既存材 】
2009年改訂版既存鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準 同解説
121頁 項目:(2)第2次診断法による場合(a)材料強度

 部材の終局強度の算定に用いるコンクリートの圧縮強度ならびに鉄筋、鉄骨の降伏点強度および破断強度は表7(15頁)に示す値を用いることを原則とする。ただし、材料調査により材料強度が得られた場合には、実状に応じた値を用いることができるものとする。
表7 終局強度の算定に用いる材料強度
圧縮強度または降伏強度
破断強度
コンクリート
設計基準強度(N/㎜2)
-
丸   鋼
294N/㎜2
402N/㎜2
異 形 鉄 筋
規格降伏点+49(N/㎜2)
規格最小引張強度(N/㎜2)
山 形 鋼
294N/㎜2
402N/㎜2
その他の鉄骨
規格降伏点×1.1(N/㎜2)
規格最小引張強度(N/㎜2)



【 SRC 造 補強材 】
2009年改訂版既存鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の改修設計指針 同解説
58頁 項目:2.2.2材料強度 上から10行目、11行目

 補強部材に用いる材料強度は本指針中の該当部で必要に応じて適宜示している。
 特記なき場合は、関連規・基準や指針に定める値としてよい。


2009年改訂版既存鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・改修設計指針 適用の手引き
『適用の手引』では下記の例題で計算時に用いた材料強度が記載されています。
例えば
172頁:項目1.各構造部材の補強計算例 1.1鉄筋コンクリート壁の増設
176頁:項目1.各構造部材の補強計算例 1.2鉄骨ブレース・鋼板耐震壁
196頁:項目1.各構造部材の補強計算例 1.4柱(鋼板巻き補強)



【 操 作 】
『材の降伏点強度』
[耐震診断]→[計算条件]→[鋼材の降伏点強度、破断強度指定] より
・タブ:降伏点強度(既存) 既存材の降伏点強度を指定できます。
・タブ:降伏点強度(補強) 補強材の降伏点強度を指定できます。
・タブ:破断強度(既存)  既存材の破断強度を指定できます。

既存材については、『SS400(SRC山形鋼)』 の指定欄を設けています。
補強材については『「引張、圧縮、曲げ」、「せん断」』の欄を設けています。
「せん断」は指定がなければ曲げの値を参照します。異なる場合は、自動の指定を除き降伏点強度をご指定ください。

『頭付きスタッドの引張強度』
[耐震診断]→[増設部材]→[頭付きスタッド・接着系アンカーのせん断耐力]→〔頭付きスタッドのせん断耐力〕タブより 1本あたりの引張強度(N/㎜2)を指定してください。せん断耐力を自動計算とした場合、指定した径、引張強度の入力から頭付きスタッド1本あたりのせん断耐力を自動計算します。

『接着系アンカーの降伏点強度』
[耐震診断]→[増設部材]→[頭付きスタッド・接着系アンカーのせん断耐力]→〔接着系アンカーのせん断耐力〕タブ より 1本あたりの降伏点強度(N/㎜2)を指定してください。せん断耐力を自動計算とした場合、指定した径、降伏点強度の入力からアンカー1本あたりのせん断耐力を自動計算します。

※上記で指定したスタット、アンカーの材料情報を基に[耐震診断]→[増設部材]→[増設ブレース接合部の配置] で配置した本数に応じ、接合部の耐力を自動計算します。


【出力】
グラフィック出力
項目:2.5 鋼材の降伏点強度の指定および引張破断強度


【注意】
降伏点強度、引張強度の指定は 鉄筋種別(鉄骨種別)1種類につき1項目となります。同じ種別で異なる降伏点強度を指定できません。診断者判断となりますが、異なる場合は利用してない種別を用い、任意の降伏点強度の指定をご検討ください。


参考
2017年版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準 同解説
平成29年7月1日2017年改訂版発行
1頁:項目【本文】1.3用語の定義 (2)建物の調査に関する用語 材料強度
6頁:項目【本文】2.5材料強度の設定
77頁:項目【解説】2.5材料強度の設定 (2)鉄筋の材料強度(降伏点)の設定

2017年版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指針・同解説
平成29年7月1日2017年改訂版発行
ⅳ頁:項目【まえがき】第2章 補強計画と基本設計
          (修正として、既存部材と補強部材の材料の強度のとり方を明記した)
2頁:項目【本文】2.2.2材料強度
80頁:項目【解説】2.2.2材料強度 (2)補強部材・部位に用いる材料強度
        解表 2.2.2-1 鉄筋の材料強度
        (既存部、補強部、アンカー筋の降伏点強度について表形式で記載)

2009年改訂版既存鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準 同解説
2009年12月1日2009年改訂版発行
5頁:項目【本文】2.4材料調査
15頁:項目【本文】表7 終局強度の算定に用いる材料強度
        (表中:山形鋼の降伏点強度 294N/mm2)
121頁:項目【解説】(a)材料強度
        (記載:補強部材に用いる材料強度は本指針中に(中略)適宜示してある。)

2009年改訂版既存鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の改修設計指針 同解説
2009年12月1日2009年改訂版発行
2頁:項目【本文】2.2.2材料強度
57-58頁:項目【解説】2.2.2材料強度
211頁:項目 5章 施工計画 (3)鉄筋など
212頁:項目 5章 施工計画 (4)鋼材など

2009年改訂版既存鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・改修設計指針
適用の手引き 2009年12月1日2009年改訂版発行
172頁:項目1.各構造部材の補強計算例 1.1鉄筋コンクリート壁の増設
      (C)材料強度 壁筋 (SD295に対し降伏点強度:344N/mm2)
176頁:項目1.各構造部材の補強計算例 1.2鉄骨ブレース・鋼板耐震壁
      (C)材料強度 鋼材(SN400Bに対し降伏点強度:258.5N/mm2)
              (アンカー筋SD345に対し降伏点強度:345N/mm2)
196頁:項目1.各構造部材の補強計算例 1.4柱(鋼板巻き補強)
       材料強度 鋼板(SS400に対し降伏点強度:235N/mm2×1.1)
207頁:項目1.7柱脚・鉄骨継手部
209頁:項目1.8あと施工アンカー

補足
「RC2001年版RC耐震基準」平成16年2月10日改訂版5刷
2.5.3 精密調査に基づく材料強度の設定
【解説】
(2)鉄筋の降伏点強度
(a)鉄筋を抜き取り引張試験を実施した場合は、その結果に基づき降伏点強度を設定する。
(b)(a)以外の場合は、設計図書に記載された鉄筋仕様に基づき、降伏点強度を以下の様に設定する。
 丸鋼の場合(SR24):294N/㎜2
 異形鉄筋の場合(SD30,SD35):規格降伏点強度+49N/㎜2
(c)設計図書が無い場合、または設計図書に鉄筋の使用が記載されていない場合には
 昭和30年以降の建物については、建設当時に一般的に使用されていた鉄筋の仕様に基づき、
 鉄筋の降伏点強度を丸鋼の場合は240N/㎜2異形鉄筋の場合は300N/㎜2を設定してよい。
 昭和30年以前の建物については、鉄筋の抜き取り引張試験を行って設定する必要がある。

「2001年改訂版改修指針」平成16年2月10日改訂版5刷
2.2.2材料強度
【解説】
補強計画に用いる材料強度は、既存部分について原則として
現地調査により確認した値を基準とする。
<略>
 鉄筋の降伏点強度は
  丸鋼で294N/㎜2、
  異形鉄筋で規格降伏点+49N/㎜2としてよい。
 鋼材の材料強度については「鉄骨鉄筋コンクリート造の耐震診断基準」に準拠する。
<略>
補強部材・部位に用いる材料の強度は、本指針中の該当部分に必要に応じて適宜示してある。
特記なき場合は、関連規・基準や指針に定める値としてよい。強度の異なる新旧の材料が
混在する部材・部位として計算する際には、危険側の評価とならない様に材料強度を
定めて計算式を適用してよい。

「SRC耐震診断基準」1997年12月3日改訂版
3.3強度指標C 3.3.2第2次診断法による場合

表6

材料強度
破断強度
単位
(kgf/㎝2)
(kgf/㎝2)
コンクリート
設計基準強度
-
丸鋼
3000
4100
異形鉄筋
規格降伏点強度+500
規格最小引張り強度
山形鋼
3000
4100
その他の鉄骨
規格降伏点強度×1.1
規格最小引張り強度

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文書情報

製品カテゴリ: DOC-RC/SRC 最終更新日: 2020-07-31
バージョン: DOC-RC/SRC[ver.9.x],
文書番号: DOCR00587
分類: その他


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