ゾーニング部分について診断に考慮する建物重量を指定できますか? [文書番号 : DOCR00890]

概要
共通条件や直接入力で指定できます。計算機能について説明します。
回答
DOC-RC/SRCでは1つの建物のモデルのうち判定対象外となる部材に「診断計算に考慮しない柱・壁」を指定しますと、指定した部材の耐力を診断計算時の耐力集計から除きます。残った診断に考慮する部材でゾーニング部分のみの耐震性能を得ることが出来ます。

重量も同様に『耐震診断計算条件:診断に無視した部材が負担する建築重量の考慮』を『考慮しない』と指定しますと「診断計算に考慮しない柱・壁」の負担した長期軸方向力を各階の診断計算時に考慮する『診断対象層から最上層までの各層重量の合計(以降、総重量と称します。)』の集計から除くことができます。
ここで、「診断計算に考慮しない柱・壁」は下階から最上階まで連続して配置されるものとし、指定した鉛直部材の負担した長期軸方向力を除きます。
中間層のみに「診断計算に考慮しない柱・壁」を指定し、総重量から除きますと、上階の総重量が下階の総重量を上回る可能性がありますのでご注意ください。

例えば
下図のようなL型の平面形状となる1つの建物のモデルについてX方向検討時にAゾーンのみを診断する場合
Bゾーンの鉛直部材に「診断計算に考慮しない柱」、「診断計算に考慮しない壁」を指定します。
共通条件の『耐震診断計算条件:診断に無視した部材が負担する建築重量の考慮』を『考慮しない』と指定しますと、総重量から指定したBゾーンの鉛直部材の重量(負担する長期軸方向力)を差し引くことができます。
結果、Aゾーンのみの『総重量』を考慮できます。



伏図


A-A面フレーム図


「診断計算に考慮しない柱」について
「診断計算に考慮しない柱」の指定は柱のみに有効となります。
例えば、耐震壁の側柱のみに「診断に考慮しない柱」の指定を行った場合、壁版を有効とします。壁版の形状が雑壁に該当すればフレーム内雑壁として考慮します。診断計算に考慮しない柱については、検討方向毎(X・Y方向毎)に「診断に考慮する・考慮しない」の指定が行えます。

「診断計算に考慮しない壁」について
「診断計算に考慮しない壁」の指定は壁版のみに有効となります。
例えば、耐震壁の壁板のみに「診断に考慮しない壁」の指定を行った場合、両側の柱は独立柱又はそで壁付柱として考慮します。「耐震壁」の長期軸方向力を総重量の集計から完全に除く場合は、上記伏図、BゾーンのFフレーム1-2軸間のように、壁版に「診断に考慮しない壁」、側柱に「診断に考慮しない柱」の指定が必要です。正・負方向毎に「診断に考慮する・考慮しない 」の指定は行えません。ご注意ください。


補足
【補足1】
Bゾーンの特殊荷重等の指定について
Bゾーンに指定した特殊荷重等でモデル化した荷重の『総重量』への考慮について説明します。


Bゾーンの特殊荷重等の配置


追加重量について
各階の診断計算に用いる『総重量』に考慮します。
柱軸力に加算せず、総重量から除く場合は、追加重量の配置のさいに柱重量加算の項目で「柱軸力に加算しない(地震用重量のみ加算)、基礎計算用軸力に加算する」または「柱軸力・基礎計算用軸力に加算しない(地震用重量のみ加算)」を指定します。また、節点を介し、鉛直部材の負担軸力に考慮しますので、伝達先の鉛直部材に『診断に考慮しない柱・壁』が指定されている場合も総重量から除くことができます。

建物内・外の任意点追加重量について
各階の診断計算に用いる『総重量』に考慮します。
柱軸力に加算しないと指定されている場合でも別途に『総重量』に加算されます。
地震時の水平力計算時の層の重量(Wi)にも考慮します。
『総重量』から除く場合は配置を除きます。

建物外の雑壁の重量について
各階の診断計算に用いる『総重量』に考慮します。
壁重量の伝達方法で「柱軸力に加算」を指定されている場合、床上に配置されていない場合には、重量の伝達経路が特定できないため柱軸力には含まれませんが、別途に『総重量』に加算されます。地震時の水平力計算時の層の重量(Wi)にも考慮します。『総重量』から除く場合は、配置を除くまたは、壁重量の伝達方法で「はり荷重項、柱軸力、地震力に加算しない」を指定します。

特殊節点荷重について
各階の診断計算に用いる『総重量』に考慮しません。
指定した荷重ケースに応じ弾性解析時に節点荷重として加算します。

特殊はり荷重について
各階の診断計算に用いる『総重量』に考慮します。
荷重ケースに「鉛直」を指定した場合、LL/TL、LLE/LLの指定に応じ、各階の『総重量』に考慮します。『総重量』から除く場合は配置を除きます。
または、鉛直部材の負担軸力に考慮しますので、伝達先の鉛直部材に『診断に考慮しない柱・壁』が指定されていれば『総重量』から除くことができます。


【補足2】
鉄骨造の架構について
DOC-RC/SRCであっても鉄骨造の架構の入力があれば、入力モデル全体の計算に考慮し、層重量、剛性を考慮し弾性応力解析を行います。
そのため、鉄骨造の架構についても各階の診断計算に用いる『総重量』に考慮します。
「診断に考慮しない柱・壁」を指定し、鉛直部材の負担軸力分を各階の診断計算時に考慮する『総重量』から除くこともできます。

【注意】
部材耐力計算時に考慮する地震時変動軸力について 指定により部材耐力計算時に弾性解析時の地震時変動軸力を考慮しています。弾性解析時の地震時水平力に考慮する層重量については、「診断に考慮しない柱・壁」の指定は考慮せずに、鉄骨造の架構を考慮した地震時変動軸力を求めています。
「診断に考慮しない柱・壁」の指定は建物の解析モデルには考慮されません。ご注意ください。


B-B面フレーム図


詳細
出力

【グラフィック出力】
重量について
項目:9.4.6 各層節点重量の内訳
項目:9.4.7 柱軸力に加算しない重量(雑壁・任意点追加重量)
項目:9.5 層重量、床面積
  診断に考慮した層重量を確認できます。
項目:10.2 2次診断グルーピングの結果
  「(6)最終結果」で該当階の診断に考慮した総重量を確認出来ます。

【CSV形式ファイルの詳細出力】
[耐震診断]→[CSV形式ファイルの出力]→[フレーム毎の層重量一覧]より
CSV形式出力で各層のフレームごと層重量の計算結果を確認できます。

【ウインドウ】
[ウインドウ]→[準備計算結果図の表示]を開き、右クリック:準備計算結果図の表示設定より
表示モード:CMQ・節点重量を表示しますと各節点の重量、各層、フレームごと層重量の計算結果を確認できます。


操作

「耐震診断に考慮しない柱・壁」の指定について
DOCR00884をご参照ください。

重量について
診断に無視した部材が負担する建築重量の考慮
[耐震診断]→[計算条件]→[耐震診断計算条件]→〔共通(モデル化・終局強度)〕タブ より
診断で無視した部材が負担する建築重量の考慮「考慮する(省略値)」、「考慮しない」のいずれかを指定できます。

特殊荷重等について

追加重量
[構造計算共通条件]→[特殊荷重]→[追加重量]より、柱軸力への加算方法を指定できます。

任意点追加重量
[構造計算共通条件]→[特殊荷重]→[任意点追加重量]より、配置、削除を指定できます。

雑壁の重量
[基本データ入力]→[壁]→[雑壁の入力]より、壁重量の伝達方法を指定できます。

特殊節点荷重
[構造計算共通条件]→[特殊荷重]→[特殊節点荷重]より、計算に考慮する荷重ケースを指定できます。

特殊はり荷重
[構造計算共通条件]→[特殊荷重]→[特殊はり、柱荷重]→[はり(パラメータ)]タブより、計算に考慮する荷重ケース、LL/TL、LLE/LLを指定できます。

層重量の直接入力
[耐震診断]→[計算条件]→[建物重量の直接入力] より、省略値のチェックを外します。
「層重量」、「単位床面積重量」のいずれかを選択し、層毎の重量を直接入力します。

総重量の直接入力
[耐震診断]→[計算条件]→[建物総重量の直接入力]より、総重量の自動計算のチェックを外します。
各層に診断当該階から最上層までの総重量を入力します。最下層を除く全階数入力します。


参考
RC/SRC/S造建物の一貫構造計算 BUS-6 Ver.1.0概要編
2020 年 4月 第8版発行
項目:5.1.6 特殊荷重の取り扱い
(任意点追加重量の荷重組み合わせについて記載されています。)

[ヘルプ]→[ヘルプの目次]より
■BUS-6 Ver.1.0
[BUS-概要編]ボタンを押しPDF形式のマニュアルを参照できます。


【ゾーニング関する参考文献】

DOC-RC/SRC Ver10 概要編マニュアル
2021 年 3 月 初版発行
項目:3.2.10 構造的に一体とみなせない場合の入力方法


2017年版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準 同解説
平成29年7月1日2017年改訂版発行
項目:【解説】3.3形状指標SD 3.3.1一般
項目:【解説】3.3形状指標SD 3.3.2形状指標の評価項目と算出方法
項目:【解説】3.3形状指標SD 3.3.3剛性分布の検討方向 (3)偏在が著しい場合の例外事項


2017年版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準 適用の手引き
平成29年7月1日2017年改訂版発行
付1-3本基準適用にあたっての留意事項
項目:2.2平面形状の評価
項目:2.5ゾーニングを行った場合の形状指標の評価
項目:3平面形状や立体形状が整形でない建築物のゾーニングについての留意事項
項目:4.6 E0算出用の補正係数(Φ) (5)ゾーニングにより建築物を分割して診断することが適切と判断される場合


2017年改訂版 実務者のための耐震診断マニュアル
平成29年11月 一般財団法人 建築士事務所協会
項目:2.7.2建物のモデル化 (2)ゾーニング
項目:2.7.5形状指標の算定 (4)平面形状によるSD指標の計算の適用
項目:5.2混構造建物の診断の基本原則
項目:5.5RC造とS造の混構造の診断
関連文書
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文書情報

製品カテゴリ: DOC-RC/SRC 最終更新日: 2021-03-12
バージョン: DOC-RC/SRC[ver.10.x],
文書番号: DOCR00890
分類: 計算方法


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